以前に妻と沖縄に行った時の話である。
のんびりしたロケーションが好きな僕らは、ちゅらさんの舞台にもなった小浜島ってところに宿をとり、過ごすことにした。
原付で2,3時間もあれば一周出来るくらいの島なので、二日目からは本当にやることがなかった。
気持ちいい風が肌を優しく撫でる夕暮れ時、妻が一言。
「そうだ。」 「瞑想しよう。」
「は?」
雑念の塊のこの俺が瞑想なんて…
ヨガの先生である妻を横目で見ると、もう完全に瞑想状態だ。
こちらに参加の意思があろうがなかろうが、そんなことは関係ない。
僕は仕方なくあぐらをかいて目を閉じた。
悲しい位集中出来ない。
しょーもない考えばっかり頭に浮かんでくる。
だんだん考えるのに疲れてくる。
皮膚の感覚が強くなってくる。
風を皮膚が感じる。
自分の体を意識するようになってきた。
かゆい
汗ばんでる
耳たぶが風でプルプル動く
耳も冴えてきた
自分の呼吸が聞こえる
妻の呼吸も聞こえる
空気の音も聞こえる
音が大きくなる
ぶぅぃいん
「痛っ!!」
虫が僕の顔にぶつかった。
「とまった」ではなく「ぶつかって」きた。
しかもけっこうな勢いで。
妻に言うべきか。
いや、彼女はこの崇高な時間をきっと邪魔されたくないはずだ。
そうだ。邪魔したらギッタンギッタンにされる。
「よし。妻に止められるまで俺我慢する!!」
そして、僕の全神経は右頬に集中する 。
「ああ、虫さんくすぐったいよ」
「鼻を登ったり降りたりしないでよ」
「鼻の穴にははいらないでね❤」
顔中がかゆい
彼の六本の足が僕の顔を刺激する。
だんだん自分が自分の顔を歩いている気になってきた。
虫に集中することで虫になれるのか。
虫君の行きたいところも僕が決めれそうな、そんな気さえして来たとき、
「ああ~気持ちよかったぁ!!」
妻が目を開けた!!
僕はゆっくり目を閉じたまま妻のほうに向いた。
妻が言った。
「ユージ君!!」「かなぶん!!」
ああ、君はかなぶんだったんだね。
ゴキブリじゃなくて本当によかったヨ。
後々、妻に事情を話したら、「言ってよ」って怒られたけど、言えなかったヨ。
妻は寝るまでずっと笑ってたヨ。
僕もなんだか照れくさかったけど笑ったヨ。
瞑想は自分を空にして対象そのものになること
かなぶん君、僕にこんな素敵な体験をさせてくれてありがとう!
また逢うことがあったら、その時は優しく僕にとまってね❤
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